【期間限定掲載コラム】[速報版3]復興特区法改正案3本出そろう~課題を克服する法律一本化はなるか?
4月2日、野党側が2本目の「東日本大震災復興特別区域法の一部を改正する法律案」を衆院に提出した。今までの与野党案は、いずれも土地収用法の「緊急使用」の規制緩和を一部認めるものである。しかし、与党案も野党案も、すでに土地の調査が完了しているようなケースでないと抜本的な負担軽減にならなかった。
この問題点は、与党案の課題ということですでにコラムに書いた。
[速報版2]復興特区法の一部改正案により用地取得は加速するか~法案一本化に向けた考察
http://www.law-okamoto.jp/column/976.html
そこで、被災地のニーズをくみ取った抜本的な改正案を提案したのが今回の野党案ということになる。岩手県・岩手弁護士会の共同研究案を具体化したものであり、かつ日弁連意見書の案と共通している。
[4月2日提出の復興特区法改正案の概要](クリック拡大)
内容は、
(1)被災関連市町村等による復興整備計画の告示を行う
(2)特例事業者が新設される「用地委員会」に対する採決の申請を行う
(3)2週間の縦覧の後、用地委員会による権利取得裁決、補償金の納付を行う
(4)用地委員会による補償裁決を行う
という手順を踏んで、補償裁決については6カ月経過時点で仮裁決を行って補償金の払渡し等を行うことで、早期着工ができる。
縦覧ののち、異議申し出がない場合には、補償金予納の上、直ちに手続中使用裁決を行い早期の工事着工を可能とする。
憲法上の問題点である「手続保障」と「財産権保障」の問題をクリアしつつも、「居住権」を確保するための迅速さを失わない法案である。条文数も多いが、調整の苦労の跡が見受けられる。
この4月2日の野党法案により、一連の土地収用加速のための「復興特区法改正案」が出そろった。
すでに述べたことであるが、被災地が使いやすいメニューを選べるように選択の幅を増やすのが国の仕事ではないかと考える。復興を実感できる法改正となることを望む。
これまでの2つの法案とは一線を画する法案なだけに調整は難航が予想される。
拙速な法案で禍根を残すよりは、じっくりと調整した結果、抜本的な法改正を出すことが求められているのではないだろうか。
与野党3つの法案をどう調整するかであるが、もし与党案だけをベースに考えるとしたら、次のことは最低限追加修正が必要だと考えられる。
与党案の課題(クリック拡大)
与党案への修正提言(クリック拡大)
岩手県のニーズや日弁連の意見書による提案に少しでも近づけることができるだろう。
(4月7日加筆)
4月6日の河北新報社説が次のように最初の与野党2法案の課題を厳しく指摘する。
ようやくメディアで問題の本質を取り上げていただいた。関連部分を抜粋する。
土地収用には、手続き中であっても着工できる緊急使用という仕組みがある。この場合、土地調書を提出するまで、着工から6カ月の猶予が与えられる。改正案は、与野党ともに猶予期間の延長を認めた。
これらの措置により、確かに土地収用の入り口要件は格段に緩和されるだろう。だが、これで本当に現場の負担が減るかと言えば、答えは「ノー」だ。
いずれかのタイミングで土地調書を作成して提出しなければならず、結局、人手不足の被災自治体の負担は減らない。
そもそも地権者の特定が困難なのだから、土地調書を整える見込みがないとなれば、被災自治体は、緊急使用の権限行使を諦めざるを得ないだろう。
加えて与党案には、重大な瑕疵(かし)があった。緊急使用の要件に「震災からの復興を円滑かつ迅速に推進するのが困難な場合」という一文の入れ忘れだ。これでは、土地収用委員会が着工を許可しない可能性がある。
練り込み不足の改正案を提出した背景には、与野党の先陣争いがあったと聞く。復興事業の停滞に直面している被災地にとっては、甚だ迷惑な話だ。
これを受けて岩手県や日弁連が提言する法案については以下の通り評価を加えている。
被災地の土地収用については、先に岩手県や日弁連が復興加速化法案の創設を提案している。被災自治体は、収用する土地の代金に見合う補償金を供託して着工。補償金の支払いなどは第三者機関に任せてしまうというアイデアだ。
民主、生活の両党は先日、現場の声、法曹の知恵に着目してさらなる改正案を提出した。国会は、被災地からの提案を生かし、復興に資する改正法の一日も早い成立を期してほしい。
【関連コラム】
[速報版1]復興特区法改正による用地取得加速化と法案のポイント
http://www.law-okamoto.jp/column/976.html
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