【コラム】単行本「災害復興法学」(慶應義塾大学出版会)発刊のご挨拶
この度、慶應義塾大学出版会より、自身初の単著となる『災害復興法学』を出版する運びとなりました。謹んでご挨拶を申し上げます。
震災直後の避難所で、多くの方のさまざまな困難を知りました。しかし、現行制度では生活を再建し復興を果たすことができない現実を突きつけられたとき、「専門家」はあまりに無力でした。
しかし、その悲痛な『声』をデータベースにする提案が受け入れられてから、少しずつ政策実現のポイントが見えてきました。本書は、被災された地域の『声』を起点にして、災害復興政策や防災政策が実現していく軌跡を追いかけるものです。研究学術書でも法律実務書でもない、「読み物」として目を通していただけたら幸いです。
私自身は、震災当時、出向先である内閣府庁舎におり、被災経験はほとんどありません。そのような私が、「災害復興法学」などと銘打った書籍を発刊する資格があるかどうかについては、多くの葛藤がありました。
それでも、震災から3年半以上が経過した今こそ、被災地の4万件の『声』から真実を把握し、政策が実現した軌跡を、法律家の視点から紹介する意義があるのではないかと、執筆を決意するに至りました。
本書がこの国の未来を担う方々の参考になればと願います。
2014年9月吉日
[書籍のご購入は]
【Amazon】http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4766421639/keioup-22
【慶應義塾大学出版会】http://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766421637/
[本書の紹介]
災害後の法改正の軌跡をもとに新たな防災教育と公共政策学を提言。
中央大学大学院公共政策研究科客員教授、慶應義塾大学法科大学院講師などを務める筆者の白熱講義を書籍化。
東日本大震災直後から無料法律相談を通じて集められた4万人を超える被災者の「声」。
法律家は、地域や時間の経過によって変化する被災者のこの多様な「声」を集約・分析し、被災地の真のリーガル・ニーズに基づいた立法・制度構築を提言してきた。
本書は、この法律的課題の発見から政策提言までの軌跡を震災時の代表的ケースを用いて解説することで、巨大災害時の生活再建支援、被災地域の災害復旧・復興支援に必要となる公共政策上のノウハウ(防災リーガル・リテラシー)の伝承を目指すものである。
朝日新聞「ひと」欄でも取り上げられた著者が、震災の教訓と被災地の「声」を永く伝え、危機管理の新たなデザインを提唱する1冊。