【コラム】「大規模災害からのより迅速・円滑な応急・復旧対策に関する提言」(自民党)が明らかに
橋本岳衆議院議員が、ご自身のウェブサイトやブログ(2019年7月4日)で、自由民主党 災害対策特別委員会「諸課題対応に関する小委員会」による『大規模災害からのより迅速・円滑な応急・復旧対策に関する提言』の内容を公表・報告してくださいました。提言の全容が明らかになりましたので、これまでの経緯を含めて簡単に記しておきます。
■提言(橋本岳衆議院議員ウェブサイトより・全13頁に及んでいます)
■提言の概要(橋本岳衆議院議員ウェブサイトより)
2018年の「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)」や「平成30年北海道胆振東部地震」などにより、避難所の環境改善が災害関連死の防止に効果的であり、かつ対策が不可欠であることがより一層明確になりました。
理事として参画している「避難所・避難生活学会」は、学会をあげて、長らく避難所環境の改善、とくに「T」(コンテナトイレなど清潔なトイレ環境の整備)、「K」(キッチン・適時の適温食の提供)、「B」(簡易ベッド・段ボールベッドの即時提供)の充実と、それを支える物的・人的な制度上の対策を講じるべきであると提言し続けてきました(避難所TKB)。
2019年2月、学会のはたらきかけに呼応してくれた国会議員の方々のおかげで、与党・自民党の災害対策特別委員会に「諸課題対応に関する小委員会」が設置されました。4月下旬までのほぼ毎週、合計10回の勉強会・各省庁や有識者ヒアリング・意見交換などが実施されてきました。
避難所・避難生活学会の理事メンバーは全10回に陪席し、そのうち初回から第3回については、「避難所TKB」による環境改善やしくみづくりについて提言をさせていただいていました(第3回目に避難所環境の整備と災害救助法のあり方についてヒアリングを受けました)。
先の概要のとおり、提言は多岐にわたっていますが、特に避難所環境の整備については、以下の通り、最優先事項として提言がなされました。該当箇所を抜粋いたします。「災害救助法においては、救助の程度、方法及び期間並びに実費弁償の一般的な基準が定められているが、災害の程度によってその基準では救助の適切な実施が困難である場合には、内閣府に協議の上その基準に上乗せを行うことが認められている。このため、災害救助法が適用された場合に特別基準が活用できることをあらためて地方自治体に周知すること。また災害の実例を踏まえつつ、必要に応じて災害救助法における基準の見直しに関する検討を行うこと。」として、災害救助法の改正にも踏み込んでいるところが注目されます。
1. 避難所の生活環境の改善
災害が激甚化する中で、被災者の避難生活は長期化する傾向にあり、健康被害や災害関連死が大きな課題となっている。また、災害経験のない自治体にとって、避難所の生活環境についての知見がなく、災害救助法の運用も定型的になりがちである。避難所の生活環境を改善するため、政府は被災者の立場に立ち、地方自治体と連携して、以下の取組みを進める必要がある。
「避難所運営ガイドライン」において、「あくまでも災害で住む家を失った被災者等が一時的に生活を送る場所」であり、「質の向上」という言葉が「贅沢」という批判には当たらない旨の記載は既にあるところ、この趣旨のさらなる徹底を図ること。さらに、災害により家や家族、大事なものを喪い心身ともに傷ついた被災者を受け止め、復旧・復興への活力を養うための場を目指すべきという「質の向上」の目的を明らかにすること。
避難生活の長期化が想定される場合に、避難所において、快適で十分な数のトイレや温かい食事、それに段ボールベッドなどの簡易ベッドを提供することが標準的な避難生活であるというイメージを誰もが共有できるよう、優良事例を紹介する広報資料を作成し、認識の醸成を図ること。また、防災訓練の機会等を通じ、住民に対しても日常的にそうした避難所環境について周知を図ることや、設置に関する手順の確認や知識・ノウハウの普及啓発等に努めること。自治体が上記のような取組を進めるにあたり、具体的にどのような実現手段や連携先があるのか等、参考になる情報を政府においてとりまとめ、自治体に周知を図り、整備を積極的に勧奨すること。災害救助法においては、救助の程度、方法及び期間並びに実費弁償の一般的な基準が定められているが、災害の程度によってその基準では救助の適切な実施が困難である場合には、内閣府に協議の上その基準に上乗せを行うことが認められている。このため、災害救助法が適用された場合に特別基準が活用できることをあらためて地方自治体に周知すること。また災害の実例を踏まえつつ、必要に応じて災害救助法における基準の見直しに関する検討を行うこと。
指定避難所について、人口動態、交流人口の動向を踏まえ、地方自治体にその立地場所の適切な見直しを促進すること。また、公共施設だけを指定避難所にするのでは数に限りがあるため、旅館などの民間施設についても積極的に活用するよう促すこと。大規模災害において、自宅のある地域の避難所で避難者を収容しきれない場合もあることから、都道府県等広域行政での取り組みも視野に入れて検討すること。
こうした取組みを、日常的に各自治体との連携を図りつつ強力に推進するため、内閣府防災の災害救助体制を抜本的に強化すること。
指定避難所となっている学校施設については、平時から空調設備やトイレ改修、給食施設の整備、自家発電設備の整備、体育館の多層化等の防災機能の強化が必要であるため、積極的に財政措置も含め支援すること。その際、駐車場等にもなるグラウンドは、学校施設と共に使用されることから、整備の一体化を図ること。また、全ての指定避難所の防災機能の整備状況について、定期的に調査を行い、現状を把握すること。
避難所の開設・運営において、対口支援方式による支援が有効であった例が報告された。一方、受援側での認知度不足や体制の整備等の課題も見られた。GADM(災害マネジメント総括支援員)派遣による支援も含め、自治体における災害時の受援体制整備について、政府が促し、必要な協力を行うこと。
避難所における防犯対策については、警察との連携の下、巡回や被害者への相談窓口情報の提供を行うとともに、被害者・支援者全体に対して、いかなる犯罪・暴力も見逃さない旨を周知すること。
本委員会で紹介されたイタリアの例をはじめ、海外における災害避難所への備えや実態等について、政府において十分な調査を行い、我が国の防災政策に反映するよう努めること。
政府において、避難所の生活環境改善の観点からも、管理栄養士の活用事例やキッチンカーやコンテナトイレ等の導入事例の紹介を行うこと。
政府は、調理師などプロによる災害ボランティア活動の事例を紹介し、市町村におけるこれら専門家団体との災害時の連携強化に努めること。
さらに注目すべきは、被災者生活再建支援法の改正に言及しているところです。2018年11月の全国知事会による提言をくみ取っており、今後の法改正議論が期待されるところです(「半壊の涙、境界線の明暗~全国知事会が被災者生活再建支援法の改正を提言」(Yahoo!ニュース個人)もご参照ください
6. 生活・生業再建支援の充実
被災された方々が安心して暮らせる生活や、被災した地域の賑わいを一日も早く取り戻すことができるよう、被災者の生活再建を支援するとともに、農林水産業・観光産業などの復旧・復興等に迅速に取り組む必要がある。被災者の生活・生業再建支援の一層の充実を図るため、政府は以下の取組みを進める必要がある。
グループ補助金、小規模事業者持続化補助金やものづくり補助金について、運用面で災害ごとに柔軟な措置が取られてきている。一方、特にグループ補助金については、認定後の各企業の申請時に膨大な資料作成が必要であり、企業の負担軽減のため、申請企業へのフォローの充実・手続きの簡素化等を図ること。
中小企業や農業従事者は、事業が復旧しても、被災前の販路を一度失ってしまうと、その回復や新たな販路開拓が難しいという現実がある。そのため、被災事業者に代わって課題の整理を行い、長期的な視点に立ってアドバイスを行う事業再建のコーディネーターを設置するなど、被災事業者への支援を充実すること。
全国知事会の提言を踏まえ、被災者生活再建支援制度の半壊世帯への対象拡大等について検討するため、全国知事会とも協力して、早急に被災者の実態把握等を行うこと。
南海トラフ地震や首都直下地震などを考えると、災害関連死を防ぎ、被災者の生活再建を加速するための法制度整備は急務です。引き続き災害復興法制や危機管理法制について提言を続けていきたいと思います。
(参考)