【コメント】(NHK)「東日本大震災 一度は助かった命 震災関連死3786人」
NHK NEWS WEB 2022年3月10日「東日本大震災 一度は助かった命 震災関連死3786人」
「災害関連死」(震災関連死)についてNHKの取材を受け、コメントが掲載されました。災害関連死を巡る政策的課題については『災害復興法学Ⅱ』で最新論点まで詳述しておりますが、そこに興味を持って下さったNHK記者様より、災害関連死を巡る法律や政策の課題について取材を受け、従来より提言していた「漏れの無い事例の収集と分析」を政府が立法措置を講じるなどして対応してほしいと述べました。収集と分析の結果を、災害救助法の底上げなどより効果的な災害対策に反映させるべきであるということも強く提言したところです。
(取材を受けた部分についてのコメントは次の部分です)
■国はようやく一部事例を公表
ところが、数年前までは国が災害関連死の死者数を取りまとめる仕組みはありませんでした。相次ぐ災害関連死を受けて国は2019年から死者数や個別の事例などを報告するよう都道府県に求める体制を設けました。この11年で認定された災害関連死は4000人余り。去年4月、国はようやくこのうちの約100事例について関連死に至る具体的な経緯などをまとめた事例集を公表しました。
■行政の役割明確化し教訓生かす仕組みを
猛威を振るう自然災害からなんとか逃げ延びたとしても、その後の避難生活などで命が失われるという厳しい実態があります。しかし、教訓を次の被害防止につなげる取り組みは十分ではないという指摘もあります。災害復興法学が専門の岡本正 弁護士によると関連死の経緯などの調査は「災害弔慰金」を遺族に支払うための法律に基づいて、自治体が行っています。国は自治体の認定結果をもとに弔慰金の一部を支払う役割にとどまり、関連死を防ぐという目的で主体的に関わる制度にはなっていないといいます。岡本さんは、全国で多発する災害に対応するためにも関連死に特化した新たな法律を整備して自治体や国などそれぞれの役割を明確化し、医療関係者などの専門家と連携して対策にあたるべきだと指摘します。
「多くの方が災害関連死で亡くなっているなか、検証がなされたのは一部で、今も多くの事例が教訓として生かされずに眠っている状況です。震災から11年がたち、関連する資料を自治体が廃棄する動きもあると聞いていて、早急な対策が求められています」