【COVID-19】法務省が「新型コロナウイルス感染症の影響を受けた 賃貸借契約の当事者の皆様へ ~賃貸借契約についての基本的なルール~」を公表~事業者の事業継続マネジメント(BCM)にとっても重要な知識
法務省民事局は2020年5月22日、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた「賃貸借契約」の当事者へ向けて、賃貸借契約上の基本的なルールを解説するPDFを公開しました。いまのところQ1~Q3(3ページ半)の簡単なものですが、とりあえず賃借人と賃貸人が知っておくべき基礎知識としてはコンパクトにまとまっていると思います。詳細については、弁護士の法律相談を受けていただくことをお勧めします。
(以下抜粋)
Q1:新型コロナウイルス感染症の影響で売上が減少し,現在借りている建物の家賃が払えなくなってしまいました。すぐに退去しなければならないのですか。
A:賃料の支払義務の履行は重要ですが,建物の賃貸借契約においては,賃料の未払が生じても,信頼関係が破壊されていない場合には,直ちに退去しなければならないわけではありません。
Q2:新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少し,今後,家賃を払い続ける見通しが立ちません。家賃の減額や支払猶予等について,オーナーと交渉することはできないのでしょうか。
A:賃貸借契約に定められている協議条項に基づき,オーナーと家賃の減額や支払猶予等について交渉を申し入れることが考えられます。
Q3:テナントが新型コロナウイルス感染症の影響により営業を休止することとなった場合,賃料が減額されることにはならないので すか。
A:当事者間でこのような場合についてあらかじめ合意している場合 には,それによることになります。また,当事者間での協議も重要 です。協議に当たっては,賃料の減免の要否や程度等について, 事案ごとの事情を考慮して判断していただくことになります。なお,テナントが休業した場合にも様々な場合がありますが,一例を挙げると,別段の合意がない場合において,オーナーは賃貸物件の使用を許容しているにもかかわらず,テナントが営業を 休止している場合には,賃貸物件を使用収益させる賃貸人の義務は果たされており,テナントは賃料支払義務を免れないものと考えられます。他方,商業施設のオーナーが施設を閉鎖し,テナントが賃貸物件に立ち入れず,これを全く使用できないようなときは,賃貸人の義務の履行がないものとして,テナントは賃料支払 義務を負わないことになると考えられます。
ここで強調したいポイントは、賃借人(店子)の権利についてです。いったん賃貸借契約を締結した以上は、1回の支払いができなくなったというだけで、すぐに解除されたり、退去を余儀なくされたりするわけではないとうことです。
大災害や大規模経済リスクが発生した場合に、事業者が事業継続マネジメント(BCM)を果たしていく上で重要なポイントは、「支払いを抑制する」「(公的支援を含めた)収入を確保する」「従業員の雇用を維持する」「顧客・取引先に事業継続情報を発信し続ける」という点です。賃借人側にとっては、賃料の猶予や一部減額を受けることで、「支払いを抑制する」ことを目指し、同時に営業拠点を確保し続けることで「顧客・取引先に事業継続情報を発信し続ける」ことと「従業員の雇用を維持」することを目指します。その間に公的な支援を含めた「収入を確保」する道を模索できることが理想です。
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また、賃貸人(大家/オーナーら)にとっても、経済危機の状況下で新たな賃借人・入居者を見つけることは困難な場合もあります。現在の賃借人に事業を継続してほしいが退去されてしまうことを嘆く相談事例も多くあります。賃貸人も、幅広に事業者として受けられる給付支援や特別の融資を探索することで、賃料収入の減少をどこまで受け入れられるのか、中長期の視点で考慮することが求められます。
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最後に賃貸借契約に関する最近の話題です。民法の債権法分野の大改正があり、2020年4月1日から本格施行となっています。これにより賃貸借契約部分も新しくなっています。原則として施行前の契約であれは旧民法のルールが、施行後の契約であれば新民法のルールが適用されることになります。この点も法務省のパンフレット「賃貸借契約に関するルールの見直し:2020年4月1日から賃貸借契約に関する民法のルールが変わります」(PDF)にわかりやすくまとまっていますので、参照してみてください。