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【コラム】鳴門の百年企業 大塚製薬工場の災害対策と地域防災貢献

2022年3月3日午前、株式会社大塚製薬工場の鳴門本社と鳴門工場を訪問しました。今回の訪問を調整してくださった徳島大学環境防災研究センターの湯浅恭史先生、同じ研修会の講師として偶然ご一緒することになった兵庫県弁護士会会長津久井進先生(災害復興分野における私の師匠です)、私の3名でうかがわせていただきました。

 

1921年に創業した大塚製薬グループ発祥の地。大塚製薬工場には創業時の古民家が移設保存されています。大塚製薬グループの主幹企業である「株式会社大塚製薬工場」の主力商品は点滴の輸液製剤。国内シェアの過半数を誇ります。著名な商品としては「オロナイン軟膏」「OS-1/オーエスワン」も直接製造しています。

 

輸液ほか私たちの命や生活に欠かすことができない商品を製造する会社。大規模災害に備えたリスクマネジメント対策も超一流です。事業継続計画(BCP)では「社員の生命の安全確保」を第一に掲げ、「企業資産の保全」「製品在庫と原材料の確保」「物流手段の確保」を軸に様々な対策と職員訓練を欠かしていません。特に「生命の安全確保」を真っ先に掲げ、明記していることは、化学・製薬メーカーとしてのプロフェッショナルが現れているところだと思います。勿論企業内の自衛消防隊も配備されています。

 

医療現場のニーズに応えるべく、日常より医療関係者、看護福祉関係者との連携強化を重視し、業界と様々な情報交換をすることを欠かしていません。一見当たり前のように思えますが、最新の正しい知見を持ち続けることは、いざというときに十分な対策を講じていたことを証明する重要な要素だと考えられますので、リスクマネジメントとしては重視すべき視点です。しっかりと事業継続の基軸に位置付けIR資料などでも明記ていることは、多くの企業が学べる視点だと考えられます。

 

地域防災への貢献は顕著な実績があります。地元の鳴門市とは防災に限らず、鳴門市民の健康や栄養に関する包括連携協定を締結していますが、なかでも防災活動で特筆すべきは、地域住民の避難場所として工場敷地や建屋を開放しているところです。日頃からの防災訓練や学習会なども重ねており、地域、企業、徳島大学などが、名実ともに産学官連携を構築し、一体的に防災教育や災害対策を行っています。「平成27年度地区防災計画モデル地区」に認定され、「平成28年版防災白書」にも事例紹介がなされています。

 

印象的なのは職員やその家族への配慮です。学校などの夏休み期間中には工場見学を行います。子供たちや家族が参加することで、会社全体の一体感を醸成することができます。

 

大塚製薬工場は創業から百年間、鳴門で操業し続けています。職員の7割ほどが近隣地域に住んでいます。地域連携は会社の存続そのものであり、会社の存続が地域の経済の支えなのです。このような関係性と強みを生かして、平時から自然に住民と企業が垣根のない意見交換が実現しています。

 

家族への配慮は結局のところ職員の働く意欲に繋がり、それは事業継続を支える基盤になります。職員一人ひとりへの配慮を明確に謳うBCPに拍手を送りたいと思います。

 

私からは、「被災したあなたを助けるお金とくらしの話」の防災教育プログラムを紹介いたしました。大きな災害があったときに、職員の自宅や家族も大きく被害に遭うことが予想されます。そのときに、住まいや生活再建のための法律や制度が存在し、それらを知ることで、絶望的な状況から少しでも希望を持っていただけるはず。それを防災教育段階で、職員の福利厚生という側面から学んでいくことが必要ではないか。それはひいては事業継続を強化することになるはずだと提案させていただきました。

 

ご多用のところ事業継続や地域防災に関して意見交換の時間を割いていただきました大塚製薬工場様とご担当者様に感謝を申し上げます。工場を巡っていると、敷地内でお忙しくされている小笠原社長ともすれ違いました。本当にありがとうございました。

 

最後に今回無茶なお願いを聞き入れてくださり大塚製薬工場様とお繋ぎくださった徳島大学の湯浅先生に改めて御礼を申し上げます。